Akiyoshi

アシュラのAkiyoshiのレビュー・感想・評価

アシュラ(2016年製作の映画)
4.8
これが地獄か。悪いヤツしか出てこねえ。この世の中に楽なことなんて無い。同情すらできない極悪の道と真っ赤に染まった地獄絵図。這い上がった先もまた……地獄。天国なんてない。



「アシュラ」



一説によると、正義の神であったアシュラは娘を力の神インドラに奪われた怒りで、戦いを挑み続けた。しかし、幾度の戦いの中でアシュラは善を失い妄執の悪へと堕ちた。その終わりなき戦いの場が、「阿修羅」と呼ばれた…。

私が観てきたアクション映画の中には必ず、「かませ犬」的なザコキャラが存在している。主人公を強く見せる演出や、悪役の存在感を誇示するための効果として「かませ犬」キャラを登場させるのだ。そんな取るに足らない悪役。なんと本作品「アシュラ」には、そんな悪役は登場しない。全員がある意味強く、弱くない。そもそも「悪役」が誰か分からない。それほどまでに悪いヤツが大量に現れる。しかも悪いヤツがどんどん悪いヤツになったり、悪いヤツが悪いヤツを倒すので、なんだか爽快感も生まれない。悪いヤツのバーゲンセールである。

始まった瞬間から破滅的で、必死で、儚い。リアルな暴力が正義なぞアリはしないと謳うかのようである。あまりにも強大な悪の存在が優しい世界を打ち砕いていく様は刺激的で心にムチを打つのだ。常に誰かを恫喝して、相手を疑って、敵を屈服させるために蠢く社会の闇がワルをさらに悪い方へと導いていく。汚職や癒着に満ち満ちている社会が世界に広がっているのかもしれない。数々のもみ消された事実への激しい怒りと皮肉。この世界の不条理がワル視点で生き様を見てくれと言わんばかりに見せられる。

クズだからこそ魅せられる「生きている」ということ。破滅への道を辿ると、いずれ終点が来る。必ず死ぬのだ。それを察知して必死で生へとしがみつく。そこが地獄だろうと関係ない。狂おうがもう後には戻れない。負の連鎖は断ち切れない。こんな展開に陥った人間の躍動感は凄まじくエネルギッシュで感情が爆発している。絶望的な状況でもはや何の為に戦ってるのかどうかすら分からないほど追い込まれた時に見せる「人間の終わり」が胸糞悪いシーンがあろうが、グロいシーンがあろうが、感動させられた。とても良い。いや、めちゃくちゃ良い。

殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴られて殴られて殴られて殴られて殴られて殴られて殴られて殴られて殴られて殴られて殴られて殴られて殴られて殴られて

打って打って打って打って打って打って打って打って打って打って打たれて打たれて打たれて打たれて打たれて打たれて打たれて打たれて打たれて打たれて

そうじゃない…そうじゃないんだよ…。

終わらない地獄が、逃げられない破滅が、追ってくる。後ろから。

これがこの世の地獄か………
Akiyoshi

Akiyoshi