ヨーロッパ映画の中では
群を抜いてクセの少ない作品。
日本でも人気があるのは
その観やすさによる所もあるだろう。
LGBTQを超えた
普遍的な愛の素晴らしさと切なさが
テーマにありながら、
全編に渡って夏の開放感が溢れる
美しい映像も唯一無二。
青空はどこまでも青く、
庭の芝はどこまでも緑、
川の水は澄み切った透明で、
夏の雨の涼しさですら感じられる。
色彩や音楽はどれも瑞々しく、
ひと夏の忘れえぬ思い出として
観ているだけで気持ちが良い。
若き日のティモシーシャラメが放つ
儚く危うげでいて神聖なオーラが
我々の視線を画面から離そうとしない。
子犬のように懐く素振りが可愛いのだ。
登場人物全員が博愛の心を持ち、
嫌な気持ちにならないのも
お勧めしやすいポイント。
特にラストの父親の言葉が刺さる。
30歳になる頃には心がすり減る。
感情を抑えることは、余りに惜しい。
寛大な理解をも超越した包容力にやられた。
恐らく何度も見返したくなる名台詞である。
そしてなんと言ってもエンドロールのシーン。
演出した監督、そしてあれだけの時間を画面いっぱい独り占めして尚、画がもつティモシーシャラメの演技力にあっぱれ。
静かな余韻と強烈なインパクトを残す
あの幕引きは天才的だと思う。
青みを残した果実のように
甘味と苦味を感じさせられる青春映画。