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君の名前で僕を呼んでのgorgonzolacocoのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
3.9
個人的に、ジェームズ・アイヴォリーが脚本を書き
主人公の父親が美術史研究者の設定
と聞いただけでひいき目で観ているのは仕方ない

オープニングでローマ時代の彫刻の写真の数々が映し出されその「美」が彼らの基準であることがまず示される
被さる筆記体のクレジットとピアノの音色が印象的

1983年夏、17歳の少年
イタリア北部の避暑地
父のアシスタントとして6週間だけやって来た24歳の青年との恋

でもただの恋ではない。言葉はなくとも
魂で分かり合えてしまう相手が
同性だった
互いに躊躇しながら、とうとう愛を交わす

別れが来ることをわかりながら
そうなる運命だったふたり
気の合う男同士が自転車で走って隣の部屋で過ごすうちに
その過程は、互いに心を晒さないよう
慎重に手探り状態で見る側もどの時点でどちらの気持ちがより傾いているのかは判然としない

理解して見守る両親
最後の父の言葉が胸に沁みてくる
喜びを得ることができたお前は幸せなんだ、と
そしてその後に訪れた苦しみからも逃げるな、と
実は自分にもそうしたいことがあったが飛び込めなかった、と

携帯もネットもなく
暑くて暇で
編曲してピアノを弾いて
本を読んで泳いで
同じ避暑に来てるフランスの女の子と仲良くなって
親のお客さんのおもてなしにつきあわされ
なんと懐かしく、贅沢な夏休みなのだろう

人間らしい人間が育つだけの
余白がたくさんあった最後の時代だったのかしら

ヨーロピアンに比べなかなかオープンになれないアメリカ人のアーミー・ハマーがいい
ティモテ・シャラメの横顔は彫刻そのもの
細身で永遠の少年タイプ
ラストシーン、オリヴァーの電話を受けて様々な思いを想像させる表情にエリオの成長が見て取れた

君の名前で僕を呼んで
僕の名前で君を呼ぶ
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