もりあいゆうや

君の名前で僕を呼んでのもりあいゆうやのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
3.9
第90回アカデミー賞脚色賞を受賞作。日本での公開規模はそこまで大きくないが、一部から熱烈な支持を得ていて、何かと気になっていた作品。

1983年、北イタリアの避暑地を舞台に、17歳の主人公エリオットのひと夏の経験を描く。
ただし相手は大学教授である父の助手、オリヴァー24歳♂。

主人公エリオットを中心に、時系列もストレートに出来事を重ねていく。
導入部から物語は淡々と進んでいく。
淡々と進み過ぎて、
エリオットがなぜオリヴァーに惹かれたのか、どのタイミングで?元々そのケはあったの?などが
分からず。急にパンツを頭に被るからビックリ!
本来なら重要であるはずの2人の出会いのシーンもかなり淡白。映画としては「後々、この2人が…」的な未来を示唆するような意味深な見せ方をして引っかかりをつけるべきだと思うけど、そういうのもなし。
ただ全くないわけではなく、何かとオリヴァーに突っかかるエリオットや、やたらと多いボディタッチ、2人の着替え描写、ベッドで悶々とする姿など、観る側に意識させないよう、か〜な〜り〜繊細に描写を重ねている。
この意識させないようにする描き方が、同性へ惹かれる気持ちを抑制するエリオットとシンクロしていることに気が付く。
その分、オリヴァーへの抑え切れない感情をぶつけた後は、2人の愛は情熱的に加速度的に盛り上がり、濃厚なベッドシーンや急展開が出てくる。
つまりこの作品は、ひと夏を通して青年エリオットの愛する人との出会いから別れまでを描くと同時に、作品の描き方自体がエリオットの心情のメタファーとなっている。
そう考えると最後にひっそりと1人で涙するエリオットのシーンがより印象的に観えてくる。

そんな仕掛けもありつつだが、そもそもこの作品、雰囲気が冒頭から最後まで素晴らしい!びっしりと素敵要素が詰まっている!
自然豊かな舞台、美しいピアノのメロディ、半裸の美男子達、等々。
特に主人公を演じたティモシー・シャラメが良い。ティモシー・シャラメのおかげで、この作品の瑞々しさと艶っぽさが30パーセント増し増し。飄々とした姿から苦悩する姿まで、どの顔も西洋彫刻のモデルのように美しい。
この作品でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた彼、今後要注目の俳優です。

オリヴァーとの関係に絞り込まず、家族や異性の恋人との関係もしっかり描かれているのも良い。むしろ個人的にはこっちサイドのエピソードの方が面白かった。
原題の『Call Me By Your Name』をちゃんと『君の名前で僕を呼んで』と邦訳したのも好感が持てる。

観ている時は正直そこまで入り込めなかったけど、要素要素を思い返してみると、良い作品だったのかなぁと思えてくる不思議。

2018年ベストお耽美映画。