半兵衛

好色花でんしゃの半兵衛のレビュー・感想・評価

好色花でんしゃ(1981年製作の映画)
4.3
大阪で平凡に暮らしていた夫婦の丸子と兵太郎、そして夫の父親の兵助。しかし兵太郎が多額の借金を残して失踪し、残された二人は悪徳金融業者に借金返済のためお座敷ショーという名のセックスショーをすることを強要される…。お互いに想いを寄せていながら隠して普通に生きてきた二人が、本番行為をしているうちにお互いへの愛を再確認し禁断の関係にのめり込んでいく様を軽妙かつ哀しく描く人情ポルノ。原作・脚本を担当した藤本義一の世界観をピンク映画界の名匠渡辺護が見事に映像化し、笑いと涙が同居する傑作ドラマに仕上げた。

メインキャストにチャンバラトリオを起用することでペーソスと笑いの両方を矛盾することなく表現し、どキツい内容のはずなのに彼らの軽妙なやり取りで片意地張らずに見ることが出来る。また兵助をメンバーの一人である南方英二が熱演、気の弱い平凡な初老の男が性行為から自信を取り戻し男として生きる姿を見事に体現する。そしてメインヒロインの丸子を担当する鹿沼えりも明るくて気立てがいい、のんびりとした関西弁のヒロインを好演。チャンバラトリオの面々とも息の合った掛け合いを見せ映画の雰囲気づくりに貢献している。

後半セックスショーを重ねていくうちに恋人同士のような関係になっていく二人のやりとりは見ていて微笑ましいが、同時に不思議な切なさが胸から込み上げてくる。そしてその予感が的中する終盤、不意な別れが訪れても一瞬の幸せを噛みしめ最後の行為に浸る丸子の姿は不謹慎ながら儀式を行う巫女のように神々しく、そしてどこか可笑しくて哀しみがあり不思議な人情ポルノを見事に締めくくる。

あとポルノ映画としても結構レベルの高い出来映えで、鹿沼えりをはじめ出てくる女優陣いずれもスタイルがよくてしかもそれぞれエロチックに撮っているのでそういう点でも満足に。

ちなみにホテルの一室を借りてのセックスショーの合間にチャンバラトリオたちによるコントが行われていたのだが、当時ストリップショーの合間にやっていた芸人のコントはこういう内容だったのではという見事なエロいコントに仕上がっている。おそらくチャンバラトリオもストリップショーでこういうコントをやっていたんだろうなという感慨を覚える。
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