OASIS

満月の夜のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

満月の夜(1984年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

喧嘩ばかりの生活を変えようと、別居する事になったカップルの話。
監督はフランスの恋愛映画の巨匠エリック・ロメール。

自分の容姿に絶対的な自信を持つような女性は嫌いだし、世間的にも嫌われる傾向にある。
だが、そんな女性と分かっていながらも惹かれてしまう男は少なからずいる訳で。
男を惹きつけてやまない(と思っているだけかも)女性のプライドが揺さぶられ右往左往する様子が面白い。

パリの郊外にあるアパートで暮らすルイーズとレミ。
毎日のように口喧嘩を繰り返す二人はそんなやりとりに嫌気が差し、イレーズは分かれて暮らそうと提案するが...。
「二つの家を持つ者は分別を無くす」。
冒頭のこの言葉通り、二つの家の行き来を繰り返す事で、その過程で少しずつ価値観や恋愛観に綻びが生じ男女関係において常識的な事ですら判断が危うくなる。
「あなたを愛しているから離れて暮らすのよ」
「例え離れて暮らしてもあなたを愛している事には変わりはないわ」
そのどこから湧いて来るのか分からない理屈と根拠は理解し難い。

エリーズは親友のオクターヴを度々家に招き入れる。
手を出して来ようとするオクターヴを「友達だと思っていたのに!」と非難するが、薄着で歩き回ったりと知らず知らずのうちに誘惑してしまっている事に気付いてないようで。
「そう、気づかない間に誘惑してしまっているのね。罪作りな女だわ...」と実際そんな事は言っていないがそれに似たようなニュアンスの台詞を吐くエリーズに若干イライラする。
別居先で手当たり次第に男に電話を掛けまくるが相手にされず、けれども寂しがる事はせず強気な態度をとり続ける。
寂しがり屋で弱気な面を見せる女性であれば、守りたいという欲求を刺激され何が何でもこの子の為にしてあげたい気持ちになるが、無駄にプライドが高かったりする相手だと「一人で何でも出来るんでしょ」と、どうぞご勝手にして下さいという風にどうでも良くなってしまう。

レミがエリーズの友人のカミーユに恋心を抱いているという噂をオクターヴから聞かされる。
エリーズは、愛そのものに依存しているというよりも「愛される」事に依存しているのではと思う。
自分が愛されてさえいればその相手は誰でも良かったりする。
極端に言えば、それが人で無く犬猫であっても変わらないのではないかという気もして来る。
「愛され過ぎると上手く愛せなくなってしまう」という言葉も、深いようで自分が誰かを本心から愛する事ができない事を知りつつ煙に巻いているだけのように思えたり。

「満月の夜がそうさせるのかもしれないな」というとロマンチックで詩的な感じがするが、要は眠りから覚めた野獣性が暴走しているというだけのものであったり。
知的で軽妙洒脱な会話の中にも何処か下品さを感じるのだった。
レミの元を去って行くラストシーンは、エリーズがもう二度と戻らない事や、呼び出したはずのオクターヴが表れないという事を仄めかしているように思えた。
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