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満月の夜のotomisanのレビュー・感想・評価

満月の夜(1984年製作の映画)
4.0
 求愛に義理で応えてりゃあ、窮屈だろうて。そんな相手とカラっカラのパリ郊外、ジードルング暮らしとあっては街の灯も恋しかろう。だが、それより自分で探し当てる恋のほうがずっと良くないか?パスカル。もてない男に同情は禁物だ。
 これを遺作のパスカルが恋を探し当てたとは思えないので冥福を祈るばかりだ。15の齢からあんなことをよく続けたもんだが、これ即ち、寄り付いた男がルネ同様、みんな円満に巣立っていったということか?されば、パスカル、男育ての女神と言うべきか。当人にどうもそんな自覚が無さそうな辺り、余程後腐れなく済んだものか。これはある種、人徳?それとも追いかけて泣き狂うような恋にも打たれない不徳を抱えるか?
 そんなパスカルが愛され過ぎるとうまく愛せないと言う。よく分からんが、例えば男にたかる技とか、手玉に取る術とか、その気にさせるナンだかが発揮されないとかか?と言うても、そんな感じで無いのがパスカルのパスカルたるところだ。話中、パスカルの身持ちの悪さが話題とならない辺りただただ不思議ちゃんと言うほかない。これが1984年パリと郊外を行き来する男女の事情というところか?嫌味の一つも言うならAudiにBMW、Hondaと外国車ばかり目に付くわ、もてそうにない男ばかり出るわ、通販はIKEA、冴えない仏蘭西真っただ中の男女事情とも見え、当時これを知らずに済んで誠に幸いだ。
 さて、見終わってみると、もっと昔ならパスカル、滋味に溢れた立派な娼婦が務まったろう。それがアール・デコまで出て手に職を持って自活を遂げ、恋愛の代わりに寄り付く男と付かず離れずゲームを続けるわけで、なんやらフランス的"新人類"の一断章に付き合ってしまった白けに倦怠する次第であったが、かの満月の夜、サックス吹きとの一夜が記念すべき晩なら好都合。レミもマリアンヌと片付くし、いい加減こんなゲームは終うがいいよ。
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