【ホームドラマにしちゃダメ】
面白くなくはない、というくらいの映画かな。
剣じゃなくそろばんで勝負、というのは、徳川時代二百六十年の平和が続いたことを考えれば或る意味当然ではある。私も昔、金沢に旅したことがあるが、その某所で見た武士の役割分担図面は、現代のサラリーマンと同じであった。役割が部や課に分けられていて、そこにいろんな武士が貼り付けられている。今なら、総務部○○課××係長を拝命いたします、というのと同んなじ感覚が武士にはあったはず。
ただし、である。映画である以上、そろばん勝負のサムライはあくまでそろばんで最後まで闘わなくてはならないはずだが――「闘う」ってのは「人生は闘いだ」というような意味合いで――そうなっていない。最初は米の横流しによる不正をあばくところから始まるので悪くなかったが、後半に行くほど尻窄みになり、むしろ平凡なホームドラマになってしまう。
武士はあくまで闘うことが使命。刀の代わりにそろばんを持った以上、最後まで闘わせなければいけなかった。いや、実際の武士はこんなものではあったのだろうけれど、映画を実生活と同じにしちゃいけませんよ。そこに根本的な計算違いがあったのではないだろうか。