わだげんた

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のわだげんたのレビュー・感想・評価

4.0
この映画の一番古い記憶は上京してしばらくの頃、新宿南口を出たところにあった映画館のデッカイ看板。あれは三時間版だったのか、四時間版だったのか。読めないタイトルの看板が妙に新宿の町に溶け込んでいたのを覚えてる。でも、長尺にビビってその時は観なかった。

その後、エドワード・ヤンという監督を追うようになった頃には、この映画は劇場で鑑賞するのは不可能な状態になっていた。噂では権利関係が複雑すぎるから、ということだったけれど、そんな映画は他にもあって、結局上映されたりソフト化されたりしたもんだから、この映画もいずれ、と思っていたら待てど暮らせど上映されない。その間に中古ビデオやレーザーディスクは高騰し、ますます観られなくなった。

この映画の事を誰かと話すときに、すでに観ている人はその素晴らしさを。観てない人はこの映画を観るすべを語った。CSでは放送したことあるらしい。新宿のTSUTAYAにレンタルがある。目白、大泉学園のレンタルビデオ屋に置いてある。エトセトラエトセトラ。

噂をたどり、それらの店を訪れる。ツイてないことに何度訪れてもレンタル中。一組(ビデオは二巻組)しか置いてない上に、一週間レンタル可能だもんな。諦めず、特に新宿TSUTAYAに何度もチャレンジ。そして、ようやく借りられた! 何度か観たいのと長尺ということもあり、ハードディスクにダビング。VHSはすぐに返却。長年観たかった作品、ようやく観始めたものの。。。暗いシーンが多くてそもそもVHSの映像だと辛い上に、何度も何度も再生されたビデオの画面はやっぱり集中して観るには辛かった。。。

何度かチャレンジしたものの、途中で断念。そのうち、ハードディスクがクラッシュしてしまった。。。

何かの雑誌で松江監督(だったと思う)が、潰れたレンタルビデオ屋さんで譲ってもらったビデオを繰り返し観ている、という記事が載っていて、ああ、無理にでもビデオ画質で観とけば良かったと思ったり。

また、時が経ち、アメリカでBlu-rayが発売されるというニュースが!クライテリオン版! もちろん英語字幕でこの
お話が理解できるはずもないのだが、美しい映像でこの映画が観られるならと米Amazonで購入(便利になりましたね^_^;)数週間後、到着。

早速観ましたよ。
美しい。美しすぎる。ちょっと前に恐怖分子のDVDを観て映像のキレイさに感嘆したのですが、もうそれ以上!
ただやっぱりお話は全くわからず。。。ながらで半分くらい観たものの、それっきり。。。

で、去年の(2016年)の東京国際映画祭で上映される事が発表される。劇場公開も2017年にされるようだ。いち早く観たい!と思ったものの、チケット争奪戦はし烈を極め、あっさり敗退。。。観た人の感想がSNSなどにupされる。『素晴らしい』『美しい』『傑作』。

そして…。3月11日、一般公開。初日の初回に観て参りました。良席をゲットし、あとは観るだけ。。。

長年の宿題をやっと終えたような気持ち。何度も観たオープニング。最初は上手くストーリーに入り込めなかったものの、映画の世界にどっぷり浸かってからは、四時間、長く感じなかった。スクリーンで観られて良かった。

この映画を日本で観られるようにするために、たくさんの人々が動き回ったことでしょう。それらの方々にあらためて感謝いたします。ありがとうございました!

あの日、新宿南口のあの映画館でもしこの作品を観ていたならば、僕の人生の何かが変わっていたような気がする。
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