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牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のshinobuのレビュー・感想・評価

4.9
曰く、伝説の傑作。
上映時間は4時間近く。
料金は一律2200円。

上映してくれた各関係には頭が下がる思いだが普通の映画を観に行くように身構えず観たかったな。

…と観る前に少し思っていたが、いざ始まるとそんなノイズは消え去った。伝説は本当だった。

A Brighter Summer Day
これは本作の英題であると同時に本作でも当時するプレスリーの曲Are You Lonesome Tonightの歌詞の一節である。
エルビス・プレスリーに代表されるアメリカや外国の文化が台湾を席巻し始めた時代。

本作は少年たちの世界を舞台にしながら、60年代台湾社会の箱庭的作りになっている。

学校の隣に撮影スタジオがあるが、
当時日本映画が台湾を席巻したらしい。台湾も公開される映画会社を絞ったりしたが日本も台湾マーケットが有望だという事で合作で映画が作られた。

「金門島にかける橋」(1962、日活=中影)、松尾昭典監督、主演:石原裕次郎、芦川いづみ、華欣、二谷英明、唐宝雲

「秦・始皇帝」(1962、大映=中影)、田中重雄監督、主演:勝新太郎、川口浩、宇津井健、若尾文子、中村玉緒

「カミカゼ野郎 真昼の決斗」(1966、にんじんプロダクション=國光影業)、深作欣二監督、主演:千葉真一、高倉健、白蘭

そういう時代だったようだ。

A Brighter Summer Day

光があるところには闇がある。
ギラリと光る日本刀。台湾の日本家屋。美しいあの娘は君が思うような娘じゃない。夜と朝。抱擁と殴打。大人と子供。不良とがり勉。男と女。英語と台湾語。対比するもの同士はわかりあえないのだろうか。

「ちがう いのちは闇の中の瞬く光だ‼︎」とナウシカの言葉を思い出す。

美しい一枚絵のような完璧なショットの積み重ねに対して、物語は少しづつ少しづつ闇に侵食されていくのだが最後に薄っすらと光のような物が見えた。その光は鈍く眉唾ものだが確かに光だった。

ふと、こんな曲を思い出したのであの子供たちに送りたい。
レナード・コーエンのハレルヤだ。

And love is not a victory march
It's a cold and it's a broken Hallelujah
Hallelujah Hallelujah Hallelujah Hallelujah

愛は凱旋パレードじゃないんだ
これは冷たく、壊れたハレルヤなんだ
ハレルヤ ハレルヤ ハレルヤ ハレルヤ

ハレルヤとは主をほめたたえよという意味だ。
本作にも至るとこでキリスト教を思わせるイメージが出て来る。(だからマーティン・スコセッシが好きなんだな。)
このハレルヤの歌詞のBroken Hallelujahってとこが好きだ。

信仰心がなくても誰にも神のご加護(のようなもの)が降り注ぎますように。輝く夏の日のように。
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