中庭

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版の中庭のレビュー・感想・評価

5.0
三度目の鑑賞。日本語字幕付き、巨大スクリーンでの鑑賞は初。
リマスター作業の見事な達成により、明滅する光一つひとつの質量と輪郭の際立ちにいちいち視線を揺さぶられ、とても穏やかに鑑賞することは叶わず。酒をがんがん入れたことも幸いした(どうでもいい供述)。
ビデオでは気付けなかった懐中電灯の表面の質感、押入れの閉まり切らない引き戸の隙間から漏れるリビングの光、黒から赤へさも秩序的に反転する血痕の数々、消灯と共に土の壁に残像を残す様々な人工灯の光の営為、暗中の刃に反射する光の連続体、スクリーンに広がる闇の物理的な多層性、狭窄的な視野しか持てない登場人物たちを徹底して俯瞰するカメラのまなざし、禍々しい程に騒々しさを増す環境音と説明性のない唐突なオフボイス、届けられなかったメッセージディスク、エモーショナルな断絶を伴う無音の演出。
何度も繰り返し向き合うことを約束させられる、数少ない決定的な名作。
余談だが、新しく作られた予告編に差し挟まれる「刺殺」の音のトラックは、劇中で鳴ることはない(別のシーンのもの?)。
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