あなごちゃん

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のあなごちゃんのレビュー・感想・評価

4.9
友達曰く「開始3時間は退屈なんだけど、そこを無理して観ると最後30分に言葉にならない感動がする」
と聞かされ、無理して行ってみました。

感想は、私もやはり上手く言葉に出きない感覚を感じました。
「人生は努力すれば変えられる」と思っている主人公と、「世の中は変えられなく従うしかない」という運命とのイタチごっこを繰り返しながら、最後に生きることの再帰性に触れて終わるような映画でした。
ラストシーンは、私も映画のラストにずっと耳をすませながら、自分が死ぬ時のことについて思いました。
人間関係に対する憎悪と嫌悪を心底感じるとともに、それでも関係することしかできない私たちの脆くも善意のある行動。悪に泣き、悪と闘いながらも、人生に理不尽さを感じるのは「他人に対して期待しすぎるから」であると自覚できない少年を、神の存在を感じるとともに愛せるように思いました。

少年時代の短い夏。人生を濃縮したような短くも不可逆的な一夏に、少年の人生の全てが走馬灯のように開ききったような時間。

ラスト30分というより、ラスト10分がそれまでのどのシーンをも凌駕する迫力があり、回収する力があったと思います