あなごちゃん

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのあなごちゃんのレビュー・感想・評価

5.0
擦り傷を舌先でちろちと舐められているような映画だった。
常時不快であるが、持続する不快感に快感を感じる。不快の中に快感タームが紛れていて、不快であっても離れられなく、もっとその不快感に没入したくなり落ち着かなくなった。
この不快感全然嫌いじゃないかもしれない。不快だけど。不快だと思いつつ、不快から解放されるために新たな不快を求めるのは、矛盾に満ちてて、自ら落とし穴に入るような行動だと(思うが、、)

廊下のシーンなどのカメラワークや派手な音楽は、キューブリックを彷彿とさせた。
前作の「ロブスター」は正直ピンと来なかったけれど今回はゾクゾクきた。シナリオが前作よりも緻密だったと思う。

人間の、医者に対する微かな嫉妬、富裕層に対する微かな嫉妬。日常を送る上ではシグナルが小さいがゆえに押し殺していた、上流階級に対する微かな妬みが、ちろちろと露出していて、私をソワソワとさせる。パスタのシーンでマーティンが言わんとしたいことは感覚的に理解できた。言葉にはできない上流家庭に対するルサンチマンがちろちろと流れていた。