べーぐる

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のべーぐるのレビュー・感想・評価

5.0
初めてこの作品を映画館で観ることが出来た。
舞台は60年代初頭の台湾。様々な国の政治的思惑に利用されアイデンティティを失ってしまっていた国民たちの暮らしや空気感、当時のリアルな台湾の姿が描かれるとともに、中学生の少四が抱く淡い恋心と様々な息苦しい出来事、それらに揺れる動く少年の心の機微が丁寧に紡がれる。
どこからか感じる台湾の人々の陰鬱さ、少年の周りに流れるヒリヒリとした空気、少明への想い。そしてなぜ少年が愛する人を殺傷するに至ってしまったのかを4時間という時間を持って体験する。それが僕にとってのクーリンチェ少年殺人事件だ。

静かに、でも確実に胸の中に落とされる言葉にできない感情。それを何度観ても味わせてくれる不思議な魅力が封じ込められた映画。
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