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羊の木のtontonのレビュー・感想・評価

羊の木(2018年製作の映画)
4.1
サスペンスではなかった。
必要以上に不穏な空気感を演出したりすることはなく、観客の視線を操る事もしない。
ただ目の前の「人殺し」という情報だけを知らされた6人の行動を見せられる。
そして最後に気づかされる「もう人を殺さない人かどうか」の2極論でしか見てなかったことを。

もっと奥にある人間性やなんかも見て感じているのにその事柄の匂いだけでパッとそれらを否定できる方に重心を傾け。
その人が殺す事に至ったことなど、他者への想像力も端から欠けていたことに。

この物語の舞台で行われる伝統的な祭り「のろろ祭り」。
海の向こうから来たのろろ様を倒したあと祀る、これは懺悔であり、過去の歴史なのだろう。今まで同じような出来事があったのに同じ過ちを繰り返さないように。
練り歩くのろろ様を見てはいけないというのも、見た目や一つの要素で判断しないようにただただ感じろという事なのではと、物語とリンクした意味合いがあると思った。

また錦戸くんがいい!
ちょっと優しくて・ずるくて。まさに凡人。見ている観客の代弁者になっていた。
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