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ソワレのtontonのネタバレレビュー・内容・結末

ソワレ(2020年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

FILMARKSのオンライン試写にて

男女の逃避行。
物語を要約するとそうなるだろうが、今作は父親からの性犯罪を受け我慢することで全てが報われると思っていたタカラにとっての失われた時間を取り戻すジュブナイルもののようにも見えた。

まさにな親殺しから始まり、ショウタはイマジナリーフレンドのようで。
本来少しづつ経験し大人になることを、大人になってしまったタカラが足早に取り戻していく。
その描写はとても豊かに思えるのだが主人公二人の声よりも水の流れる音や蝉の声など時を刻む自然音が強く聞こえ「取り戻しているがやり直しているわけではない」という残酷なまでの現実を観客に忘れさせない様にする。
特にタイトルの出現するタイミングがそうだろう。
逃避行が始まったと同時に現れる「ソワレ」の文字。少年期の「マチネ」のように見えても現実は違うのだと。

だが現実を常に意識させることで「大人(ソワレ)」の一つの要素が明確になる。
それは自分以外は圧倒的に他人だという事を理解すること。
タカラがする最後の決断、それはお互いちゃんと他人になってまた会おうだったのだと思う。
その前の夜ショウタと性行為に及ぼうとする。それは全く違う二人がほんの少しの共感から、共に過ごし、その共感の元を知り一つになろうとするようだった。
だがタカラは断る。
ショウタはイマジナリーフレンドではなく、自分の理想の物語に組み込まれ一つになるだけの存在ではないと。

そしてこの物語の終わりは物語の始まりと同じ様に、他人同士がほんの少し触れ合うことで生まれた細やかなものが映し出された。
その細やかなものに想像力を働かせること。役者として過ごすショウタが生き生きとしている姿はまさにそれなのであろう。
その生き生きとした姿は、この社会で多々見られる同一を叫び他者を安易に消費する事よりもきっとタカラみたいな人や事象を「見つけてくれる」と思う。


あと、とにかく芋生遥の演技が素晴らしい。
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