けーはち

羊の木のけーはちのレビュー・感想・評価

羊の木(2018年製作の映画)
3.2
狭い田舎の港町、元殺人犯6人、何も起きないはずがなく──過疎対策のため、仮釈放受刑者を新住民として導入する施策を始めた地方都市・魚深市。

地元住民は事実を知らないので、彼らの素性を知る観客や市職員からすると「知らぬが仏」的なヤバげな気配を醸し出すし、ヤバげな連中が集ってなおのことシナジー効果で「ヤバいよヤバいよ……」「押すなよ絶対押すなよ」感が高まる。ミニマルの静かな劇伴も歯車の狂ったような連中の生き様を演出するのに効果的。

そして町の雰囲気もヤバい。2人の生贄を求めて1人だけ生かして帰すという恐怖の神話を持つ「のろろ様」なる、邪神信仰の奇祭をするオカルトな町だ(御本尊の神様と目を合わせてはいけないという祭はヤバすぎる)。魚深という名前は魚+深きものなのでクトゥルフ神話をベースにしていると思う。

ところが、オカルト的な雰囲気や6人の元殺人犯それぞれのヤバげな空気が噛み合ってサスペンスを生み出すことはなく、ちょっと変な話、いい話止まりのパターンがいくつか続いたり、6人の中でも一番サイコな松田龍平と主人公の市職員・錦戸亮のボーイズラブ風、奇形的友情物語の空気で押し切って終わってしまったのが、うーん、惜しいなぁ……。