ほたて

羊の木のほたてのネタバレレビュー・内容・結末

羊の木(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

『のろろ様』という魚深市の不気味な象徴が終始物語のアクセントになっていた。ヒューマンドラマの中に1つこうしたモチーフがあるから陰鬱な雰囲気がスクリーンに立ち込める。吉田大八監督映画の特徴である人間の本能的な感情から生じる他者との溝が表現されている本作。「紙の月」と似ているが主人公と他者との関係が本作では逆転しているように思った。「紙の月」は真っ直ぐな愛ゆえに過ちを犯してしまい、周囲との間に埋めることができない溝ができてしまう話。本作では主人公の真っ直ぐな愛は、ハッピーエンドでないにせよ報われ、他者である宮腰は溝を埋めることができず、そのまま海に葬られてしまう。宮腰は、魚深市で新しい人生のスタートを切りたかったことが祭りで大暴れする福元を成敗することからも分かる。しかし、最後は結局自分の狂気を抑えることができなかったわけだ。サイコパスであるが、人間味が僅かに残されている宮腰の感情の変化が魚深市での過ごし方を通して伝わってきた。興味深かったのは、地方再生のために元受刑者を移住させるという設定。日本ではありえないが、海外ではこのような政策をしてる国もあるのだろうか。色々とハードルは高そうだ。
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