すずや

ムーンライトのすずやのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
5.0
すごく良い映画でした。涙なしに見られなかった……
この作品、色々な問題提起がされているにせよ、「心の傷は愛でしか癒せない」っていうのが一番のテーマなのかなと思いました。3章とも、心に深い傷を負っているシャロンを描いていて、その描写に徹したのがとても良かった。
でも、そこでまた面白いのが、心に深い傷を負っているっていうことはわかっても、その原因となる出来事をはっきりと描写していないところ。シャロンもケヴィンもそういう風に、匂わせる程度の描写がすごく良かった。こういう風に描いていることによって、「心に傷を負っていようが、人生は前へしか進まない」っていう風に伝えたかったのかな、と思いました。シャロンの心の傷の原因を描くこともできたはず。でも、この映画が描きたいのはその傷ではなく、傷が癒される過程であるから。傷が人生においてのすべてではないから。あえてそうせず、その傷が少しだけ癒され、また傷つくという描写が人生そのものなのかな、と思いました。
俳優さんの演技も素敵でした。これ確か、違う章の俳優さん同士は会ってないんだよね?流れで演じてほしくないっていう表れだと思うけど、不思議なほどみんな似てるんだよね…2章の食堂のシーンと3章のレストランのシーンのシャロンの仕草とか、あとびっくりしたのは、1章のお母さんと3章のシャロンの怒り方がまるきり一緒だったところとか……すごい。感動しかなかった…
この『ムーンライト』というタイトルもとても素敵。好奇の目線にさらされて、望まずして輝いてしまうシャロンを、太陽が照らす月に例えたこのタイトルは本当に素敵。変な邦題つけないでくれてありがとう。
私はララランドよりムーンライトの方が好きです。これが作品賞で本当に良かった…
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