見慣れていない映像は新しい感情を味わえるものである。監督も脚本家も、主人公シャロンと同じように、薬物中毒の母親に育てられたという。幸せなことに日本という国で普通に育ててもらえた自分としては、突飛な環境過ぎてなんとなくの想像しか及ばない。それだからこそ、この作品で世界の現実を知ることができる。
シャロンほどではないが、学生時代に小さくいじめられたことも、小さくいじめたこともある経験として、裏切られた時、裏切ってしまった時の事を、観終わったあとにふと思い出す。
なんの前情報もなく観たことで、どのシーンも新鮮に観られた。それほど場面展開は多くないけれども、ひとつひとつの場面が印象深く丁寧に作られている。レストランで語るシーンは、一瞬先一瞬先がどんな展開になるのか読めずに、感情的な不安定感を味わえた。
知らないことは人間の恐怖につながる。映画を通じて、色んな文化、アイデンティティーに触れられて、少しでも共感の幅を広げられるのが嬉しい。
