ayumi

ムーンライトのayumiのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
3.6
面白い、とか泣ける揺さぶられる、とかっていう映画ではなかった。ただただそこにあるものを描いている、という感じ。怒りも苦しみも悲しみも理不尽も、ただそこにあるということだけが圧倒的な事実。初見ではあまり良いと思えなかったはずなのに、なぜか結局印象に残ってて後々思い出してしまう作品。

『歩いても歩いても』とか『海街diary』の雰囲気がきっと海外の人に分かりづらいように、『ムーンライト』はアメリカで生活していないと実感として捉えにくい感覚やそれに付随する感情を映像にしているのだと思う。上の2作だと裸足で触れる畳やその匂いとか、タイルの剥げたお風呂、実家の古いビニールのテーブルクロスが肘にひっかかる感じ、夏の草いきれ、などなど五感に訴えられて自分の体験や記憶で映像が補完される感じ。囚われてるような懐かしいような、個人的な感覚なのに画面上で他人と共有できてしまうもの。
だから麻薬街やダイナーや絨毯敷きの家の中の独特の匂い、海辺なのに乾いてる風の感触とかを感じられるかによって、見えてくるものが変わる気がする。私には多分半分くらいしかわかってなくて、そのわからなさも良いと思えるかどうかがかなり人によると思う。
表層的なテーマからもう一つ掘り下げたところを見せたい映画なのかなと思えた。
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