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ムーンライトのNightCinemaのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.8
語りは一切ない中で、ひとりの黒人男性が「リトル」「シャロン」「ブラック」と成長する過程が映し出される。恵まれない家庭環境で過ごす中、クラスメイト達や恩人との出会いが、彼の心に大きな影響を与えていく。

シャロンが学校でダンスを終え、自分でお湯を沸かしてお風呂に浸かるシーンが好きだ。母親が「あの子の歩き方を見たことがあるのか」と詰るシーンには心が痛んだ。

自分がマイノリティであると気づき始めた少年時代のシャロンにとって、自分を守ることはどれだけの試練だったかと想像する。

「黒人は月明かりの下でブルーになる」という言葉は、肌の色だけでなくマイノリティ全般にいえることなのではと思う。ブルーの輝きを純粋に見てくれる世間などというのは幻に近く、世間にブルーを見せることすら簡単ではないのが現実なのだと、感じずにはいられなかった。

「世間の言いなりになるな、自分のことは自分で決めろ」ということ。少年時代からそれに必死に向き合ってきたシャロンとケヴィンが寄り添うシーンはいつも、ムーンライトという言葉がとても合う気がした。

ケヴィンが料理を盛り付けるシーンも、個人的にすごく好きなシーンでした。

飛行機の中で2度も観てしまった『ドリーム』のジャネールモネイがテレサ役で出ていた。テレサの母性は血のつながりを越えてシャロンを支えた。彼女の演技はやっぱりとても素敵だと思った。
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