ローズバッド

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章のローズバッドのネタバレレビュー・内容・結末

1.0

このレビューはネタバレを含みます

JOJOを実写化するなら、こうするべき ↓

荒木先生の愛する、ホラー・サスペンス映画の方法論にのっとるのが得策だろう。
まず、第4部全体を映画化するという暴挙はやめて、JOJO入門として一話完結にできる話を選ぶ。
最もふさわしいのは「山岸由花子は恋をするの巻」だろう。
この元ネタといわれる映画『ミザリー』のような、監禁サイコホラーにする。
むやみにアクションを描かず、あくまでサスペンス映画を目指し、終盤のみにスタンドバトルを集約する。
こうすれば、原作未読でも楽しめる、低予算の秀作ホラーが出来たのではないか。

小松菜奈が実質的な主役になり、『氷の微笑』のような、美貌と狂気の演技力が問われるが、成功すれば、彼女の出世作になり、JOJOファン以外にも話題になるだろう。

もし第二章があるなら、この方法で挑戦してみてほしいのだが…

___

本作は、原作ファンとして、映画ファンとして、両方の観点から酷評するほかない。
漫画の実写化としては的外れであり、映画作品としては、ただの駄作である。

●すべての元凶、脚本に意図がまるで無い。

コミックの2巻ぶん、主要人物の登場と、2つのバトルをなぞっただけの内容である。
一本の映画としての流れが、まったく無い。

基本的に、エンタメ映画では、主人公が抱えている課題があり、それを超えるべく冒険(戦い)が行われるわけだが、
本作においては、仗助が「何をめぐって戦っているのか?」「何に立ち向かっているのか?」が、極めて不明瞭である。
作中の2つのバトルは、登場人物の動機的に、関連性が無い。
ぶつ切りの物語では、終盤に向かって最高潮の盛り上がりにならない。

ただ原作をなぞって“実写化”しているだけであり、“映画”の脚本になっていない。

●申し訳程度に示される「父親」という題材

[アンジェロ] 虐待された父親を殺した。←(改変)
[虹村形兆] 虐待された父親が怪物となる。せめて殺してやりたい。
[仗助] 尊敬する祖父(父親の役割)を殺される。意志を受け継ぐ。

わずかな改変を用いることで「父親(家族・過去)と、どう向き合うのか?」という選択を、テーマにする事を狙っているようだ。
しかし、全体の構造そのものを変える英断を下せていないため、まったくテーマたりえていない。

[アンジェロの父親] 一瞬、セリフで語られるのみ。
[虹村形兆の父親] DIOについての膨大な昔話を省略する必要から、「バチがあたって怪物になった」という理解しがたい説明。
[仗助の祖父] 原作よりも長い時間を割いて描かれるが、類型的な善人像、ありがちな演出・演技の枠を出ない。

3人の息子たちの父親への想いは、簡略に、粗雑に、描かれるのみである。
映画の脚本であれば「怨むこと・赦すこと・受け継ぐこと」の対立を、戦いの動機づけにするべきだろう。
そうすれば「何をめぐって戦っているのか?」という、物語の根幹の流れが生まれるはずだ。

●原作未読の人にとっては、理解不能!な物語

例えば、原作未読の観客の中で、仗助と承太郎の血縁関係について理解できた人がいるだろうか?
というより、実は、理解する必要がない。
そもそも、本作において、承太郎が登場する脚本上の必要性が、何も無いのだ。
仗助の戦闘のサポートすらしていないのだから。
同じように、本作には、山岸由花子の存在理由もまったく無い。
「主要キャストの存在が無意味」そんな映画があるだろうか?

●「おいしくない部分」の映画化

第4部の冒頭、主要人物が揃うまでが本作である。
物語はここから面白くなるのであって、まだあまり「おいしくない部分」を映画化してしまっている。
例えば、アンジェロというキャラクターは猟奇殺人犯ではあるが、他の映画や漫画でもよく見られる類型的な悪人である。
そのため、それほど、読者の記憶に刻まれているわけではない。
後に登場する「重ちー」「岸辺露伴」「吉良吉影」などの方が、善と悪が表裏一体となった、複雑で魅力的なキャラクターとして、遥かに人気が高い。
成否のかかった映画化『第一章』で、あまり「おいしくない部分」を取り上げたのは得策とは思えない。

●原作の「ギャグ」の空気感が再現できていない

これは、致命的に本作の魅力を削いでいる。
脚本と演出の問題でもあるが、役者各々のコメディセンスが無い。
特に、日本の若手の俳優は、小さな動きや表情に「おかしみ」を忍ばせる能力が欠如していると思われる。

● 「映像表現」と「漫画表現」

耽美性、刺激性、猟奇性…あらゆる面で、原作漫画のビジュアルの方が美しかった。

・スタンドのデザイン、フォルムと細部
・人体のバランス(頭身、康一の身長)
・奇抜なファッション(質感、サイズ感)
・光と闇の表現法、白黒、陰影
・歩道や部屋、独特の歪み、広がり
・コマ割り(斜め線、大小、縦横)
・ポーズ(JOJO立ち)
・擬音(ドドドド…)
・ペン描線の美しさ

映画にできる事、漫画にできる事、改めて考えてみたい。