ADULTVIDEOMAN

カプール家の家族写真のADULTVIDEOMANのレビュー・感想・評価

カプール家の家族写真(2016年製作の映画)
4.7
歌と踊りもあるけれど厳密に言っちゃうとまあこれはミュージカルではない(口パクもあんましてないし)。兄弟喧嘩やら夫婦喧嘩やら親子喧嘩やら三角関係やらに現代的なスパイスを少しばかり効かせた対立と葛藤から赦しと和解に至る典型的なホームドラマ。だから歌も踊りもなくても成立するといえばするし、ないほうがより純化されてより良い映画になった可能性もないではない。しかしながらまあ商業的な諸事情でもあり歌も踊りも何曲か入っている。もはや別個に曲を売るためのコンテンツ産業に見えなくもないが、しかしそれでも物語の有機的な連関をさほどぶった切ることなく絶妙なタイミングで音楽が挿入される演出は見事というしかない。わかっちゃいるけど涙を誘うラストシーン、だけれど綿密に計算されたというほどではなくあざとさを感じさせない流麗さ。傑作。

※蛇足ですけど日本語字幕で母ちゃんが息子を呼ぶとき「君」って訳されてたんだけどこれはちょっと不自然なんじゃん?っておもった。母→息子なら「あなた」か「あんた」もしくは「お前」とかがまあ日本語としては自然かと。それとアリア・バットが兄弟に対して「君」っていうのもね。ここも(友達以上恋人未満な関係での女性→男性)「あなた」か、もしくはカタカナで「キミ」のほうがいい。細かいことですが。まあ日本語の二人称代名詞の使い方の問題ね。女性が「君」って使うとどこか不自然さを伴うのは、各二人称代名詞が実はジェンダー的に分化されてたり権力作用を伴って使われている日本語特有の問題かもね。ヒンディー語二人称がどうなってるかはわかんないのだけど、日本の観客に向けて翻訳するならある程度の「自然さ」は必要かと。もしくは意図的に訳し分けない、とかしたんかなあ?
ADULTVIDEOMAN

ADULTVIDEOMAN