Keiko

アンダー・ザ・シルバーレイクのKeikoのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

「思ってたんとちゃう」
最初の感想は良くも悪くもこれに尽きる。日本版のポスターが内容に合っていないのかもしれない。見るまでは、もっとノーマルでスタイリッシュなミステリー映画だとばかり思っていた。しかし監督は『イット・フォローズ』(2014)のデヴィッド・ロバート・ミッチェルだ。そんなことあるわけない。
雰囲気はなんとなく『インヒアレント・ヴァイス』(2014)に似ていると感じた。

本作の主軸となるのは、例えばインターネット──特に日本では5ちゃんねる(かつての2ちゃんねる)やTwitterなどの界隈──で語り継がれるような類の“陰謀論”や“都市伝説”だ。
日本で例えるならば、「きさらぎ駅」は本当に存在するのか? 消えたはすみさんの行方は? みたいな都市伝説を命懸けで解明しようとするオタク……みたいな感じか。

主人公は絵に描いたようなオタクの青年で、おまけに無職である。ただ、日本のオタク描写との決定的な違いは、彼にセフレがいることだ。これにはかなり驚いてしまった。
彼はセフレに、「水中で体を反らす裸体の女性」が表紙の雑誌を見せながら、初オナニーの思い出を語り出す。何の話だよ! と突っ込みたくなるが、これはけっこう大事な伏線である。
後半、主人公の目の前で一人の女性が殺される。裸体を反らせたまま水中に沈む彼女の死体は、例の表紙と瓜二つ。唯一違うことは、血が水を染め上げたことだ。
初めての自慰行為が子供から青年への一歩だとするならば、それを血で染めることは青春との決別と捉えることができるかもしれない。

オタク気質な人間は、物事を深読みしがちだと思う。例えば私も、映画鑑賞の後は必要以上に行間を読もうとし、内容を考察してしまう。表面だけを見るよりも、そっちの方が正しいと思い込んでいる。
だから私も本作を見ながら、(監督自身がオタクで、色んな作品のオマージュを忍ばせていることは別として)わけがわからないなと思いながらも、なんとか「作品に隠されたメッセージ」を読み解こうとしていた。わからないから余計に必死になっていた。
本作はオタクに向けられた鏡のような作品だ。わけがわからないものを前に、それらしい考察をして“真実”に辿り着こうとするなんて、本作の主人公と全く同じじゃないか。客観的に見たら「そんなもんに意味なんかねえよ!考えすぎだ!」って言いたくなるのにね。

結局、本作はどこまでが(作中での)真実で、どこまでが主人公の妄想なのかもわからない。でもたぶん、そんなことはどうだっていい。無職の青年がファックと探偵ごっこを交互にして母親に心配される。結果的にはそれだけで、何も変わらないのだから。
Keiko

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