りっく

アンダー・ザ・シルバーレイクのりっくのレビュー・感想・評価

4.4
ハリウッドの麓で家賃の取り立てに日々追われ、ベランダからの覗きが趣味の青年が、目眩く妄想により自分の部屋からベランダの向こう側に脱出し、裸体の女性とのセックスが叶っただけの物語にも思える。

空虚で怠惰で夢破れた生活でも、例えば自分が好きなノワール小説、カートコバーンの音楽、父親からくすねたエロ雑誌、マリオやゼルダといったテレビゲーム、さらに都市伝説や陰謀論などと、テレビから流れてくるクラシック映画や政治家が死んだというニュース映像を、オタク青年が脳内でひとつのノワール的世界として構築し、その迷宮を観客は彷徨わせられることになる。

一見難解でチグハグな物語に見えがちだが、自分が構築した世界の謎を解き真相に迫ることで、この部屋という狭い現実世界から脱出する。それこそまさに、この世にポップカルチャーがある意味であり、自分が好きなものをフィクションに持ち込み自由に妄想することの居心地の良さを謳い、そしてそんな趣味を共有できる観客も、このめくるめく素晴らしき世界にずっと迷い込んでいたい気持ちにさせられるのだ。
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