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おとなの事情のEDDIEのレビュー・感想・評価

おとなの事情(2016年製作の映画)
4.2
人間関係は脆く崩れやすい。知らない方が幸せなのか。正直になることの難しさ、疑うことの醜さ、すべては自分を正当化するための防衛策。全世界リメイクも頷ける大人の人間関係の複雑さをかくもわかりやすく描いた傑作ワンシチュエーション映画。

世界18ヵ国でリメイクされ、本年2021年には日本版リメイクも満を辞して公開。
日本版リメイクはいいところもありながら、気になる点が多かったのが残念でした。

▼日本版『おとなの事情 スマホをのぞいたら』のレビューはこちら。
https://filmarks.com/movies/91661

オリジナルのイタリア版は公開後、レンタル・配信開始の割と早い段階で観たことがありましたが、腰を据えて観たわけじゃないので部分的にしか記憶がありませんでした。そのため、この機会に再鑑賞。
これは素晴らしい作品ですね。日本版との比較も踏まえてレビューいたします。

あらすじとしては、あらゆる事情を抱えた夫婦三組と独り身の男性1人の7人の仲良しメンバーでホームパーティを開催。そこで全員の携帯・スマホを出し、通話やメールを公開して信頼度確認のゲームを行なうことに。ゲームを進めるにつれて、友情や愛情で結ばれた友人間、夫婦間の関係に亀裂が入っていくワンシチュエーションコメディといった具合です。

日本版との違いの前に、まず夫婦それぞれの細かい背景設定は若干の改変があれど、基本的にはどちらも同じです。
日本版は余計なテレビドラマ的演出に萎えましたが、イタリア版はとにかくテンポがいい。
日本版は確かに俳優陣の演技は素晴らしかったものの、どうしても舞台演技的な大袈裟さが目立ち没入が難しかったんですが、イタリア版は自然に友人間、夫婦間の会話劇に仕上げていてこの不自然感がまったくありませんでした。きちんと映画として勝負している感覚です。

日本版は割とスマホが鳴るたびに何らかのハプニングが起きていましたが、イタリア版はどうでもいい連絡など演出も細かいところまで丁寧に行き届いていました。
確かにそんな都合よくゲームしたその日に何でもかんでも起こるわけないと思ったんですが、イタリア版はその辺丁寧でしたね。

で、日本版で気になってしまった改善点はイタリア版ではまったく気になりませんでした。

コメディ要素も、日本版でいう東山紀之の役になるペッペ(ジュゼッペ・パッティストン)のセリフが秀逸すぎて何度も笑いを誘われてしまいました。
だけど、一番好きだったのは、Appleの創始者であるあの人の名前が出てきたとき。これは過去鑑賞の分で覚えていたところですが、2度目でも笑ってしまいました。

逆に日本版で良かった点と比較すると、確かに常盤貴子の演技は群を抜いて良かったですが、やはり演出力の違いでしょうか。イタリア版のメンバー7人の会話劇があまりにも自然で、演技力どうこうの前に全員が本当の仲良しにしか見えないところなど何も気にならなかった点が結果的にイタリア版の平均点を上げたという結果に。

ラストシーンはイタリア版が完璧すぎて、日本もいいとは思いましたがもう霞みましたね。なるほど、そういう結びにするのかと、イタリア版には感心するしかありませんでした。

やはり日本版はイタリア版のいいところを下敷きにしたからこそある程度面白く観られる作品にはなっていましたが、上手くオリジナリティを出そうと脚本で冒険したせいか、回収しきれない部分が出てきてしまい綻びを見せました。
日本版が面白かったという人はそれでいいでしょうが、逆に日本版がイマイチだったという人はオリジナルのイタリア版を観てみることをオススメします。
脚本、演出、演技ともにオリジナルに勝るものなし!

※2021年自宅鑑賞11本目
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