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おとなの事情のriverislandのレビュー・感想・評価

おとなの事情(2016年製作の映画)
3.3
 仲間内での賑やかな食卓は、お互いの携帯に入った連絡を包み隠さず共有し合うという危険なゲームによって徐々にバランスを欠いて崩れていく。
 まるで心理実験をみているかのよう。秘密を暴き合った先に破滅があることは明白なのに、7人は互いに監視しあい徹底的にゲームを遂行する。恐ろしく破滅的な連帯。しかし、もしもあの場面に自分がいたとしても、その連帯に飲み込まれてしまうんだろうな、と思いながら観ていた。終わり方が示唆的でとても良かった。

 印象に残ったのは、まず一つはペッペの秘密。終盤、今度ルチオを連れてこいといったロッコに彼は「最初の一瞥で(ルチオが)傷ついてしまう」と断った。携帯などを通さず、ただ瞳をみるだけでも暴ける秘密はあるよな、と。6人がルチオからの電話を聴いたとき、ペッペは彼らの瞳の奥に一つの秘密をみたはず。「今夜カミングアウトしたのは俺ではなく君たちだ」とは、そういう意味でもあるのか(全く違うかもしれない)。

 もう一つはコジモの秘密。これは単にキツかった…鳩尾がゾワっとした。こういうたぐいの秘密は知らなくても地獄だけど、知っても地獄だろうなと思う。コジモと"グラマラスな"マリカとの浮気がバレたとき、ふと冒頭のエヴァの豊胸手術の話を思い出して、あれは伏線だったのか…!とびっくり。ロッコはエヴァに「俺から言わせればそのままで何も問題ない」みたいなことを言っていたが、これがただエヴァを慰めるためのものでなく、エヴァとコジモの関係を知った上での言葉だったとしたら…?と考えると、ロッコがカウンセリングに通うようになったのはもしかして…?

 こう考えると目立たない言葉にもいろいろな伏線が張り巡らされているような気がする。時間を置いてもう一度観てみたい。
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