菩薩

人生フルーツの菩薩のレビュー・感想・評価

人生フルーツ(2016年製作の映画)
4.0
自然の緑、土の茶色、幼い頃拾ったどんぐり、茹でて食べた椎の実の甘み(這い出てくる蛆虫…)、遠足で掘った芋、婆ちゃんちの庭のナス、トマト、キュウリ、スイカの味、でかい梅干しのおにぎり、鳥の鳴き声、木々の葉が擦れる音。そんな思い出の種が小さな芽を出し、培われ養われ、大きな実をつけ、涙となってる流れてくるような感動を味わった。墓前に花をたむける姿に感動したわけでもないし、人が死んだから悲しいのでは無いし、亡骸に声をかける姿にグッときたからでもない、ただ寝て起きて食べてまた寝て、笑って語って寄り添って、手を携えて、そんな普通が普通で無くなってしまった今と、そんな今でも消えずに残っている土との触れ合いの記憶に有り難さを感じて泣いてしまった。自然のサイクルの中で生きる人間の美しさ、奪うでは無く育て分け与え、土を耕し人生を豊かに実らせる、ただそれだけの事がどうしてこんなに尊く見えるのだろうか。日本人は何を忘れてしまったのだろうか、どうしてもそんな事を考えてしまうけど、焼け跡から日本が立ち直った様に、壊れた鉢が再び繋ぎ合わされた様に、現代社会を人の一生を受け止める大きな器に復元する為のヒントが、この映画には隠されていると思った。
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