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アニタ~世紀のセクハラ事件~/コンファメーションのpongo007のレビュー・感想・評価

4.5
 パパブッシュによって最高裁判事に任命された絶対的な権力者で変質者のクラレンス・トーマスを、セクハラで告発した女性アニータ・ヒルさんの闘いの記録。

 トーマスもヒルさんも二人ともアフリカンアメリカン。黒人嫌いのブッシュはトーマスを最高裁判事に任命することで、共和党に左派票を取り込もうという計算。ヒルさんはトーマスの元で法律を学んでいた元教え子。在学中から、トーマスによるセクハラが続いていたという。

 トーマスのセクハラは、体をジロジロなめ回すように見たり、性器の話を頻繁にしたり、ポルノ映画の話をしたり、執拗にデートに誘ったり、などなど。ヒルさんは最初から嫌悪感を抱いていたが、教師と生徒という関係で、セクハラ被害を訴え出ることができなかったといいます。トーマスの行為は、立場の差を利用した‘’権力犯罪‘’とも言えますね。

 ヒルさんは公聴会で、真摯に、覚えている限り詳細にセクハラ被害を訴えますが、共和党のごろつき議員たちに揚げ足を取られ、嘘つき扱いされてしまいます。トーマスはトーマスで「セクハラ事件はでっち上げで、黒人を最高裁判事にしたくない勢力の陰謀」と主張します。

 ヒルさんの証言は詳細で、うそ発見器にまで掛けられ、クリアします。客観的に見て、許しがたいセクハラがあったのは事実。トーマスはポルノビデオのヘビーユーザーだということまで判明するのですが、トーマスが人種差別問題を持ち出し、論点をすり替えてしまったため、公聴会は結局、結論を出さず、うやむやに終わってしまいました。

 ヒルさんは、セクハラで嫌な思いをした上、勇気を持って告発したら、嘘つき呼ばわりされ、マスコミに追い回され、うそ発見器にまで掛けられ、セカンドレイプみたいな状態になってしまいました。本当に悔しかったと思います。共和党のゴミどもは許せません。

 こうして、公聴会は結論を出さずに終わり、ヒルさんはひどく落ち込むのですが、ヒルさんの告発は、全米の女性たちに勇気を与え、セクハラ被害に泣き寝入りしない、という風潮がアメリカで醸成されたのでした。また、ヒルさんの告発後、一気に女性の社会進出が進み、多くの女性国会議員が誕生したのでした。

 ヒルさんの闘いは、いろいろな妨害で、半ばで終わってしまいましたが、決して無駄ではなかった。ヒルさんの勇気ある行動が社会を変えたという実話、1991年の出来事です。ヒルさんのような勇気ある人を僕は尊敬します。素晴らしい映画でした。
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