かおり

太陽の下で 真実の北朝鮮のかおりのレビュー・感想・評価

太陽の下で 真実の北朝鮮(2015年製作の映画)
5.0
北朝鮮の演出するものが嘘であること、貧しさを隠していること、反日教育ーー報道ですでに知られていることを伝えるだけのドキュメンタリー映画ではなくて、

これは、独裁体制の抑圧下で人間の精神はどういう働きをするのかということを考えさせてくれる貴重な映像。
「退屈」というレビューが多いけれど、1秒1秒興味深かった。

かなり極端な話、戦時下の日本もこんなかんじだったのかな。神風特攻隊、プロパガンダ芸術の数々、鬼畜米英、神の国、、、、天皇を祀った社を開けてる時は顔を上げてはならず全校生徒で敬礼し、軍歌を歌い、ひもじくても我慢しーー忘れそうになるけど、どの国が異常で我々は普通、とかそういう視点の話ではなく、いつの時代でも「愛国」と「独裁」のコンボの恐ろしさについて自分ごととしてちゃんと考えなきゃと思った。

作品の中で出てくる、大勢の青年団が死んだ魚のような目で踊るプロムナード。ラジオ体操。子供達の行進や拍手。自分だって北朝鮮に生まれたら、自然とこうなるわけで、無力感に苛まれる。
なんか、中学の頃に女子だけ全員でやらされたプロムナードや、なぜか真剣にやれと叱咤され授業一コマをつかって指導されたラジオ体操の時間や、運動会で繰り返し練習させられた一糸乱れぬ行進…とか…既視感にとらわれる。(国立だったからよけい厳しかったのかな)日本の会社の組織体制も、多かれ少なかれ「黒を白と言え」みたいなところある。

さいごの、好きなことを聞かれてもわからず、好きな詩を聞かれても金正日大元帥を讃える詩しか知らないジンミちゃんのなみだが、すべてを物語ってる映画。子どもは理不尽なことに敏感。


共産圏独特の巨大な建物や彫像、だだ広い閑散とした道路、笑顔のない黒い服の国民、独特の踊りの動きーー北朝鮮らしい空気感を味わえたのもよかった。
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