mat9215

王冠の真珠のmat9215のレビュー・感想・評価

王冠の真珠(1937年製作の映画)
4.5
これは傑作。サッシャ・ギトリ作品は、部屋の中で完結する舞台劇より、『トランプ譚』や本作のように時間と空間を越える作品が面白い。冒頭、ギトリがジャクリーヌ・ドリュパックと目線が交わらない切り返しで会話し、歴史の逸話を語るところから引き込まれる。歴史の逸話はフランス語のギトリだけでなく、イタリア語と英語の話者によっても語られ、語られた逸話がドラマとして描かれる。この三人の話者は、後に一堂に会して歴史上の逸話から消えた真珠の行方を追うことになる。歴史上の人物の時間経過描写は、『とらんぷ譚』同様に唐突。一方で、歴史上有名でない人たちが真珠を子に引き渡すところは、まったく同じ場面が同じ俳優で繰り返される。ほかにも、語りたくなるディテールがいっぱい。3人の通訳による伝言ゲームはホウ・シャオシェンの『恋々風塵』にもあったっけ。女主人に指を嘗めさせられた黒人の少年が、革命勃発で「指を嘗めろ」と言い返す。ジャクリーヌ・ドリュパックが真珠を持つ男と会話するときに副詞しか使わない。大勢の人が席についている大食堂の中を、ギトリたちが進むのを横移動しながら追う長回し。などなど。脚本はクリスチャン=ジャックとギトリの共作。
mat9215

mat9215