KnightsofOdessa

ビリディアナのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ビリディアナ(1960年製作の映画)
3.9
No.377[ベルイマンより直接的な"神の不在"と人間の本性] 79点

主演のピナルが本作品(1961)のプロデューサーであるアラトリステとの間に誕生(1963)した娘にビリディアナと名付けたことで知られるブニュエル母国復帰作。亡命したくせにフランコスペインに戻ったことから亡命者からは避難を浴びまくったらしいが、そんなことはお構いなしに本作品を製作し、さっくりパルムドールを受賞しているあたりがいつものブニュエルという感じ。

修道女の生足を艶かしく魅せる冒頭から呆れるほどブニュエル全開で安心するし、姪にウェディングドレスを着せて"傍に居たいだけだ"と宣う感じが変態こじらせすぎてて大変笑わせて頂いた。その後の宗教的理想と現実の解離によって崩壊していくキリスト教的偽善はベルイマンのそれなんかより強烈で攻撃的で云々。確かに"家がない人に家とお金をあげました"ってのは何の解決にもなってないが、いわゆる意識高い系の塊である宗教者はこの種の頭でっかちな理想を何百年何千年もの間信じ続けている節がある。それに対するブニュエルの逆襲があの最後の晩餐だから苛烈過ぎて惚れる。キリストである目の見えない浮浪者が血であるワインを破壊して肉であるパンを杖で叩くんだからな。最高かよ。

一見関係ないように思えるホルヘも馬車に繋がれた犬の挿話によってやんわり糾弾されている。金持ちが"助ける"のは目に見えてる"可哀想な"生命体だけなんすよ。

結局、ビリディアナは髪をおろし、メイドが同じ机に座る。こうして聖性の失墜した聖女は身分も失って、カード遊びに興じるしかなくなるのだ。

パイプオルガンを弾きながら"もう寝なさい"は名言だな。パイプオルガンがある屋敷に住むことがあったら使ってみよう。あと、主人の死の前後で少女の靴下の長短が左右逆になってたけどなんか意味あんの?
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