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残像のchisatoのレビュー・感想・評価

残像(2016年製作の映画)
3.9
第2次大戦後のソビエト連邦下におかれたポーランドで、社会主義政権による圧制と闘い続けた実在の画家、ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキの物語。

まず大学から徒歩5分の場所に映画館を発見したことが嬉しい。きっと皆知らないし、興味ないんだろうけど。実際私も知らなかったけど。私が大学の人間だったら岩波ホールと提携して学生にチープな恋愛邦画とかじゃなく幅広い映画を観てもらうよう促したい。

ポーランド映画なんて初めて見た。新鮮という言葉はしっくりこないけど、やっぱりヨーロッパ映画は見慣れてないから違う文化に触れるのが楽しい。

初めから手足が無くてびっくりした。ただただ哀愁漂う雰囲気で、最後可哀想で見てられない。オープニング、晴れた丘の上でみんなで絵を描いて、転がってくるの、あんなに楽しそうだったのにすっかり忘れちゃう程暗い。思想統制って怖い。社会主義レアリズムについて無知で、途中「あ…『沈黙』みたいな私には理解できないハイレベル映画か」って不安になったけど、とりあえず理解出来た。娘が赤い旗持って行進する姿を見る親の姿も何とも。1984を見てる気分にもなった。映画を見てると世界史勉強してこなかったことを後悔することが度々ある。知ってたらもっと分かるんだろうなと。最近インターンについて調べれば調べる程自分の無知さが分かって焦る。無知は罪なり、知は空虚なり、英知持つもの英雄なり。

無惨で悲惨な展開に感情移入してしまう。教授の席を外され、給料も無く配給も受けられない。しかしどこまでも自分の芸術観を貫く姿。これこそアーティストなのだと思った。絵の具が買えないシーンは本当に心が痛む。見たい映画分野が広まったので収穫大。レポート書かなきゃだけど行って良かった。エンドロールとてもオシャレだった
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