アンジェイ・ワイダ監督の遺作。
第二次世界大戦後、スターリンの侵略と全体主義に脅かされるポーランドで、自らの信念を貫こうとする画家ストゥシェミンスキの生涯を描く。
肉体に危害を加えられなくても、自由にものを考えて表現することを徹底的に禁じられたら、それは暴力と同じ。
中には親切な人もいるのに、誰もストゥシェミンスキを救ってあげられないことにぞっとした。
彼が美術の講義で「人は見たいものしか見ていない」というようなことを言っていたシーンがあった。
視覚についてのこのセリフは、人が社会をどのように捉えているか、ということも表現していておもしろい。
ほかにも印象的な演出やセリフがたくさんあったが、特に色が印象に残った。
青い眼のストゥシェミンスキとその妻は、自由と平和の象徴。
それに対して娘は、常に真っ赤なコートを着て、パレードでも赤い旗をふっている。
ちなみに女学生のコートは紫色だった。
これは世代によって、思想がグラデーションのように徐々に変わっていくということだろうか。
ボーランドの歴史やストゥシェミンスキのことをほとんど知らなくても内容は理解できたけど、時代背景を調べてからもう一度観たい。