もしそうだとしたってその画づくりのセンスに変わりはないが、はじめ「表現に先立つ美しさ」の考えのもとにある作品か、と思った。が、メッセージとその気配に満たされた映像の移り変わりにすぐに魅せられた。(どこか『ツィゴイネルワイゼン』に通じるものを感じる)
具体的なメッセージとして、最後の最後の(そしておよそ物語を総括する)一文に『父に捧ぐ』とあった。それによって物語に浮かぶ数々の飲み込みがたい謎も、氷解とはいかずともその一部は噛みくだけ、またはそれとしてそのまま受け入れることができた。
美しさと、ある予感にのまれたい方におすすめの傑作。
文:平野