糸くず

7分間の糸くずのレビュー・感想・評価

7分間(2016年製作の映画)
4.0
第29回東京国際映画祭にて。

21世紀の『十二人の怒れる男』、いや、『十一人の怒れる女』か。しかし、『十二人~』は「少年は有罪か無罪か」という、とりあえず白か黒かはっきりとさせることができる問題を扱っていたのに対し、この映画は白黒つかない問題を扱っており、そこが「現代のリアル」という感じ。

何より、『7分間』というタイトルが秀逸。たかが7分、されど7分。このわずかな時間に込められた意味は複雑かつ重い。

そして、当然のことであるが、人種も年齢も家庭環境もバラバラの十一人の女性たちにとって、「7分」という時間の重さは全然違う。イタリアに限らず、「働く場所があるかないか」は死活問題であるから、仕事を失うくらいなら時間など差し出してしまったほうがずっと楽であろう。しかし、そのわずかな時間が失われることで犠牲になることがあるのではないか。それは、今すぐ生活を左右するものではないだろうけども、近い将来に私たちの生活をゆっくりと打ち壊すことにつながるのではないか。きれいごとなのかもしれないが、働くことが全てではない。個人の尊厳と自由が守られてこそ、そこで働く意味がある。

複雑かつ多様な現代の労働者たちの困難の縮図として、実に見事な密室劇。世界の「今」を切り取った、コンペにふさわしい力作だと思う。

物語とは関係ないことだけど、クレマンス・ポエジーはハン・イェリに似ているような気がする。
糸くず

糸くず