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サーミの血のyukacafeのレビュー・感想・評価

サーミの血(2016年製作の映画)
3.8
信号もないような田舎で生まれ育ち、現在は都会で暮らす私にとっては、特別な思い入れを持たずには観られない作品だった。田舎を離れて暮らす人なら、少なからず心に響くシーンがあるのではないだろうか。主人公エレ・マリャが自由を求めて広い世界を目指す気持ちが痛いほどわかった。

鑑賞後に、監督自身がサーミ人をルーツに持つということ、エレ・マリャ役を演じたのがサーミ人の女優で妹は実妹だということを知り、高いリアリティと説得力があるからこそ、差別や迫害の歴史がより切実に感じられた。故郷を後にしなければならないと思い立ち、行動に移すまでに経験した差別が事細かに描かれているのは、自らもサーミ人をルーツに持つ監督ならではの表現なのだろう。

アイデンティティを変えた者と留まった者の対立がまだあるということも、他の様々な問題にも通じる気がして、考えさせられた。
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