カント

サーミの血のカントのレビュー・感想・評価

サーミの血(2016年製作の映画)
4.0
スウェーデン先住民族、サーミ人の姉妹を描く💡

1930年代、サーミ人への迫害と侮蔑から逃れ自由を求める姉エレ・マリャ。伝統の生活に残る妹ニェンナ。

優秀なエレ・マリャは高校へ進学したい。しかし論理的な思考を持つ教師でさえ【あなた達の脳は文明に適応できない】と偏見に満ちていた。教育を受ける権利さえも奪われ、社会から拒絶されるサーミ人の現実。

サーミ人はラップ人とも呼ばれトナカイを放牧し、民族衣装コルトを着る。
スウェーデン人からは忌み嫌われ「臭い!」「あいつらを殺せば賞金がでる」「下等な人間」と正面から罵られる日々。

姉エレ・マリャは服を盗み、クリスティーナと名を変えてスウェーデン人のダンス場へ。ダンスに誘われたニクラスに恋するエレ・マリャ。
心配して迎えに来た妹ニェンナに「汚いラップ人ね!」と告げるエレ・マリャ😢

妹ニェンナを人生から切り捨て、サーミの暮らしを捨ててまで、エレ・マリャが得ようとした物……それは何だったのか。

ラストシーン。
慚愧の念で妹ニェンナの亡骸に頬を寄せるエレ・マリャ。サーミ人と言うアイデンティティを捨てた事に後悔は無いが、妹ニェンナがサーミ人として歩んだ人生を否定はしない。
母と、妹ニェンナが暮らしていた山岳サーミの草原を見渡す時、エレ・マリャの心に去来する感慨が奥深い。きっとエレ・マリャは、その場所で死にたいと思ったに違いない!

【ヨイクについて】
劇中に披露されるサーミ人特有の歌「ヨイク」……歌と言うよりシャーマニズムの呪術的な詠唱。
サーミ人が歴史上、迫害される理由はいくつか有って、ラップ税と呼ばれる税法上の優遇と、そしてシャーマニズム。
本作中では姉妹の絆、心の慰みとしてヨイクが歌われるが、本来はトランス状態で大声で歌うのが正しい。

その様子はロシア映画「ククーシュカ ~ラップランドの妖精~」に詳しく描かれているので、サーミ人及びヨイクに興味を持った方へオススメ😄
カント

カント