施設で育ち、ボクシングジムでトレーナーとして働く青年が、結婚を控える中、自分のせいで友人が詐欺被害に遭い…。こんなベッタベタに手垢のついた設定なんて堪えられんわと、観るつもりなかったんだけど、だいぶ評判がよいみたいなのでユーロスペースでの最終上映へ。
よかった。
とてもシンプルで、わかりやすい。
かと言って、ステレオタイプから意識的に距離を置こうとする制作スタンスも垣間見え、それは中途半端さもあったけど、好感が持てた。
どなたかが書いていらっしゃいますが、ダルデンヌ監督の作風に似てる。会話の間合い、無言で歩く場面、言葉を飲み込むときの振る舞い。そういう溜めが心をざわつかせてくる。主人公の行動は愚かだけど、その愚かさを憎まず受け入れてくれる人がいると思える希望と、思えなくなったときの絶望は、僕の経験したものでもあった。
言わなきゃいけないことを言えなきゃかぞくになれないし、言える覚悟を持たせてくれる関係こそがかぞくなんだなって、思ったりした。「僕の大切なかぞくへ」という語り出しで思いを吐露できる人と、僕は何人出会えるだろうか。