地底獣国

Dominion: Prequel to the Exorcist(原題)の地底獣国のネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

2バージョンある「エクソシスト」前日譚のうち、ポール・シュレイダーが監督して一旦お蔵入りになったやつ。

「ヴァチクソ」との共通点を指摘する方がいたので気になって視聴。なるほど主人公の神父が戦時中にトラウマとなる出来事を経験して罪悪感を抱えているとか、教会の下に悪魔が封じ込められてるとか参考にしている可能性ありそう。

で、主人公メリン神父は(やむなくではあるが)殺人に加担した自分を赦す事ができず、信仰の危機を迎えているという毎度お馴染みのシュレイダー節。ケニアで古代の神殿を発掘する作業に携わる中で、地元の部族と英国軍の間に緊張が高まり、英国人の少佐が、嘗てメリンが出会したナチス将校と同じ蛮行を振おうとする、といったあたりの持っていき方は見事。

肝心の?悪魔憑きの話は中盤まで匂わせるだけで1時間ぐらい経ってから動き出すというペースなんで、映画会社のお偉いさんが「これまずくね?」って思ったのは分からんでもないけど、だったら最初っからシュレイダーに撮らせんなや。個人的には確かにスローペースだけどちゃんと緊張感を維持できてるのでそこまで退屈には感じなかった。

ある人物に憑いた悪魔をメリンが祓おうとするのと並行して、土着の神を奉ずる地元民とキリスト教徒がお互い相手を邪教呼ばわりして険悪さMAX、もはや武力衝突は時間の問題に、という所までは良かったんだが、そっから割とあっさり祓魔に成功し、悪魔のせいで憎悪が高まっていた人々も冷静になって矛を収め…という展開には「はい?」ってな感じで拍子抜け。

そこまで来たんなら衝突と悪魔祓いを交互に描いて、人々が正気に戻った時には周りに死体がゴロゴロ、神父の話から自分達の傲慢さが悪魔に付け入る隙を与えてしまったのだと悟る‥ぐらいは踏み込んで欲しかった。もしスコセ…すんません、毎度引き合いに出すのは非礼が過ぎますな。

そんなわけで終盤失速した感は否めないけど、いつものシュレイダー映画としてそれなりに楽しく見れた一本。気が向いたらハーリン版のほうも見てレビューしようかと思ってるんでどうぞ宜しく。

おまけその1:悪魔がメリン神父に「もしあの時、違う行動を取っていたら」という光景を見せるの、もしやthunderbolt fantasy3期の元ネタでは?

その2:当初メリン役にキャスティングされていたが諸事情により降板したリーアム・ニーソン、後年スコセッシの「沈黙」にフェレイラ神父役で出演することになるという奇縁。
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