ベビーパウダー山崎

立ち去った女のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

立ち去った女(2016年製作の映画)
2.0
強者と弱者なら、弱者側に立った表現から社会を見つめていくのは至極当然の流れ(作家性が強い作品ならなおさら)、現代的な表現とはその先、それからの世界をどのように映すのか(新しい何かをどのように生み出すのか)が勝負なわけで、それは四時間弱もの時間をわざわざ使って、これが「現実」をリアルに映した誠実な表現ですよとドヤ顔で嘯くことではおそらくないと思う。ステレオタイプでしか描かれない虐げられているオカマや知恵遅れの少女を「物語」に都合よく利用しているのも醜悪だし、冤罪から復讐といった映画的な切っ掛けさえのらりくらりとはぐらかし、銃(暴力)さえ不発に終わるインポテンツな描写には心底げんなり(中年女性がオカマに銃を突きつけるくだりの緊張感の欠片もないヌルさ)。固定したキャメラと対象との距離も悪いと思うが、見せなければならない動き、見せるべきではない感情の選択が決定的に間違っている。こういった映画には上岡龍太郎もダマされないぞ。