風間唯

THE BATMAN-ザ・バットマンーの風間唯のレビュー・感想・評価

3.0
ワーナージャパンよりFilmarksサポーターとして『THE BATMANーザ・バットマンー』試写会にご招待いただいた。外連味あふれるティム・バートンシリーズ、重厚な人間ドラマのダークナイトシリーズに引き続き、ワーナーとしては3度目のリブートとなる新シリーズの第1作目、どんな展開が待っているのか期待に胸膨らませ松竹マルチプレックスが誇る丸の内ピカデリー ドルビーシネマへと足を運んだ。

本作を一言で表すならば”ヌーヴォーフィルムノワール”というところか。今までのシリーズも決して明るくは無かったが、それにも増して本作は暗い。目の周りに隈をたたえ終始俯き加減のロバート・パティンソン演じるブルース・ウェイン、そこには億万長者の華やかなイメージは一切見受けられない。モノクロかと見紛うばかりに彩度を落とした画面は、心に深い闇を抱えた彼に呼応するかのように夜や雨のシーンがほとんどを占め、その闇の中から立ち現れるバットマンは凄惨なまでの迫力を携える。ど派手な演出は無いが地味さは感じずアクションシーンは重厚、ドルビーシネマの音響とも相待って迫力十分だ。

今回の敵キャラは『バットマン フォーエバー』でフィーチャーされていたリドラー。ただしフォーエバーの戯画めいたキャラとは打って変わって本物の(らしいと思われている)ゾディアックを元に造形されたサイコパスシリアルキラー。そこにゴッサム・シティに蠢くマフィアたちが絡み情勢は二転三転、一瞬たりとも目が離せない。またキャットウーマン セリーナはバットマンを補佐し花を添える役割では全く無く、対等の存在として現れる。演じるゾーイ・クラヴィッツはしなやかな力強さを体現、本作で最も輝いていた。

NYのスラム街のようなゴッサム・シティの描写やレトロなアメ車を思わせるバットモービルなど、リアルを追求した本作。クライマックスではアメリカ社会を襲ったショッキングな事件を彷彿とさせる事態が出来する。社会から見捨てられた存在としてのリドラーが狂信のもとにその不正義を正すべく行う犯罪と、ブルースの個人的な復讐心を下地とした社会正義とは紙一重。その虚しさを悟ったブルースは最後の決戦へと赴く。ヒーロー一人の力で社会を救えるなんて絵空事だが、それでも傷つき泥だらけになりながらも人々に寄り添う道を選ぶ、それが彼、バットマンの”正義”なのだ。
風間唯

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