Fumi

THE BATMAN-ザ・バットマンーのFumiのレビュー・感想・評価

1.4
バットマンファンとして超期待して初日に鑑賞。絶対好きだと確信があり、パンフレットは鑑賞前に買ってもいた。

3時間集中して鑑賞したことには間違いないし、最後まで飽きなかったが、正直心は動かず、映画としての魅力は自分的にはそこまでは感じられなかった。

比較するのは野暮だが、あえて書くならばクリストファーノーランのダークナイトでは「人間の善悪とは?」という強烈で永遠の問いを鑑賞中に深く考えさせられ最後にバットマンが選んだダークヒーローとしての選択こそが混沌とした時代に生きる我々人間社会への希望だと感じ強く衝撃を受けた作品だったが、今作のバットマンからは隠喩的にも直接的にもそのような希望を感じることができず当事者性を感じられなかった。

もちろんセリフでの説明や簡単なシーンで、社会的な格差や不遇、人物の背景は説明されていたが、言葉の説明ではなく演出やストーリーで見せてほしかったというのが正直な気持ち。全体的に説明しすぎ。


悪役も「セリフ上だけ」でしか悪を表現されていないため、イマイチどの人が悪役なのかもわからないレベル(目が悪いだけかも)
もっと丁寧な演出で見せてほしかった。

ちょっと色々な要素を詰め込みすぎたのではないか…ウェイン家とリドラーのストーリーのみでも十分だったのでは。それにゴッサムが混沌としているようにも見えなかったのは気のせいか。防犯意識があまりにも低いので結構平和に見えたが笑

アクションシーンにしろ画力にしろセリフにしろ映画としての見せ場も印象に残るシーンがまるでない気がしたのも残念。

まだバットマン2年目だからイマイチな演出にしたという説明だとしても、映画的な洗練さに欠ける気がする。あえてだとしたら、カーチェイスシーンの妙な気合の入り用はおかしい。

ニルヴァーナの引用は、個人的には今更感があり陳腐に感じてしまったし、全体を通して特別音がいいとも思えない。Nirvanaをああやって消費して欲しくはなかった…
ただ陰鬱で単調な重低音に頼り切った印象。(同じ低音でもDUNEは素晴らしかった。)

あとなぜかフィンチャー感が強すぎるのも、フィンチャーファンとしてはモヤモヤする要素。画面いっぱいのタイトルは、マインドハンターを彷彿。だが本物のフィンチャーならばもっと一級のサスペンス、あるいは娯楽作品として撮ってくれただろう…。特に答えのない謎解きを見せられても全く楽しくないしサスペンスとしても中途半端すぎた。

普段は自分が好きな映画を批判されることに抵抗があるため酷評は書かない主義だが、あまりにも絶賛が多いことに観賞後からモヤモヤが止まらず思わず書いてしまった。これを読み不快感を持った方がいたら申し訳ないし私の方がずれているかもしれない。


ただバットマンというそもそもが魅力的なコンテンツというだけでそれなりに楽しめる3時間ではあったし、この作品に魅力を感じる点も頭では理解できるし絶賛評にも納得できるものがたくさんある。

ただ残念ながらなぜか自分の心は全く動じなかった…

やはり映画であるからには、映画でしか味わえない快楽が欲しい。色気とでも言うべきか。


二面性こそがバットマンの魅力だと思っていた。

かつてのブルースウェインの優雅な上流階級的表現は嫌われ、ただ苦悩に満ちた人間像の方が受け入れられる時代なのか。この表と裏、嘘と真実などもなく、ただ陰鬱で闇しかないバットマンが世界的に好評なことこそ、今の社会の本当の闇を表しているとしか思えない。(少々いいすぎだ…)
復讐では人を救えない、ってことを伝えたかったんだろうが、そんなのもう当たり前のことすぎるし衝撃や驚きもないしそれをセリフで言っちゃってたのにはさすがに耳を疑ってしまった…

役者陣は本当に素晴らしい方ばかりで原作や過去作バットマンも好きなので、今作はかなり期待をしていただけに自分に刺さらなかったのが残念でならない。


だが、もしかしたら自分の感性が大幅にずれていて、多くのことを見落としてきた可能性も否めないため、機会があればもう一度観ようかとも思う。

あと、やっぱりもしかしたら絶賛できる人はメンタルが元気な証拠なのかもしれないとも思えてもきた。

とはいったものの、あの「声」の主は多分あの人なんだろうし続編も初日に観るんだとはおもう。懲りずに期待してる。
Fumi

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