しん

THE BATMAN-ザ・バットマンーのしんのレビュー・感想・評価

2.5
期待していた割には、全体的に深みがなかった印象です。『ジョーカー』や『天国と地獄』のような作品の系譜かなと思っていたのですが、良くも悪くもアクションもの、サスペンスもの、ダークヒーローもの、ラブロマンスものの域を出ていませんでした。期待が間違っていた可能性もありますが。

そしてアクションとしてもヒロインの足の伸び方など見るところはありましたが傑作というほどでもなく、サスペンスものとしても謎解きのクオリティはまあまあで、ダークヒーローものとしてもバットマン自身の葛藤や悩みが見えにくく、ラブロマンスものとしてもそれに回収してよかったのという疑問が残らないでもないという、普通に普通な作品でした。ある意味、どの作品として見ても一定のクオリティと言えるのはスゴいことなのですが、僕はやはり五角形の一個が尖ったユニコーン的な作品の方が好きです。その点、世の不条理をうまく描ききった『ジョーカー』と比べると、二枚くらい落ちる印象が拭えません。

本作を僕の好みにするとしたら、やはり政治家や警察個人の腐敗というより、制度的腐敗のループを全面に押し出します。制度の腐敗を補うために腐敗するという無限ループのなかで、街から見捨てられる人々の怒りの炎が燃え上がるという構図は、本作が描きたかったものだと思います。であればこそ、制度が制度を補完していくという点と、それが見え方として個人を「悪」にしてしまう、そして個人が取り除かれてもループは残るというストーリーを強く押し出した方が面白かったのにと少し残念です。

odessaで見たので音は素晴らしく、映像もきれいだったので満足はしました。
しん

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