マレーボネ

THE BATMAN-ザ・バットマンーのマレーボネのレビュー・感想・評価

4.6
ザ・バットマンすーーーーーーーーーーーごくおもしろかった(リドラー並の感想)。
全員ハマり役かつヒリヒリしまくりの演技や、震えがくるほど印象的なシーンが多くて、好みは別れるかもだけど最大瞬間風速は確実にダークナイト3部作越えてる。

シリアスな方向性はこれまで通りでも、どのキャラクターにも奥行がかなりあって見応え抜群。特に見てて痛々しいくらい苦しくて余裕がないブルース・ウェインはかなり新鮮だった。ロバート・パティンソンのあどけない二枚目感を微塵も出さない、とにかくヒリヒリしまくりの演技で、それだけで震えてくるレベルだった。
ゾーイ・クラヴィッツはエモい担当かつカッコかわいいし、アンディ・サーキスやジェフリー・ライトはめちゃくちゃ安心感あるアルフレッドとゴードンだったし、コリン・ファレルのペンギンはまじでペンギンじゃん……ってなったし、配役とキャラ造形にあった演技が本当に神がかってた。
もちろんポール・ダノは誰よりもバッキバキにキマってて最高だった。ジム・キャリー版とかドラマゴッサムとかアーカムナイトのリドラーしか知らないので見くびってたけど、ストーリー進むにつれてヒースジョーカー並みに魅力的なヴィランに仕上がっててめちゃくちゃ感動した。
そういうキャラクターの奥行きがそのまま腐敗したゴッサムという街の奥行きに繋がり、それが「復讐か希望か」っていうラストのテーマの掘り下げに直接繋がってくるのってこういうキャラ映画として完璧だと思う。

印象的なシーンは、
・オープニングの必要以上に叩きのめす狂気バットマン
・カーチェイス後の天地逆さアングルで炎を背景に歩み寄ってくるバットマン
・停電して銃の発射光が明滅する中での格闘シーン
・発煙筒で闇を照らし人々を救うバットマン
この辺り。
最後の以外は予告編でガッツリ入ってるシーンなんだけど本編でも構図や演出がかっこよすぎて最高だった。

最後の発煙筒のシーンは、敵側の動機も自分と同じ復讐だったことが分かった直後、津波に襲われる市民を救って復讐ではなくゴッサムの希望になるっていう大事なシーン。
復讐に生きてきたダークナイトが光をもたらすっていう構図に震えたのはもちろんなんだけど、今日が3.11ということもあって「フィクションの中だけかもしれないけど、こういうザ・ヒーローな行動は心が救われるなあ」とヒーローものの王道を感じるなどした。

あと素晴らしいと思ったのは、おそらくは昨今の分断からの狂気を体現したキャラクターであろうリドラーに対して、バットマンがハッキリと「単なるサイコパスだ」と言い放ったところ。
これはホアキンジョーカーで個人的に本当にもやもやしてたところで、ああいう社会に虐げられて道を踏み外しましたみたいなのって甘えとまでは言わないけど自己愛強すぎて幼稚すぎるし、公開後しばらくそれに共感してはやし立てる後ろ向きな風潮が大嫌いだった。
悪役の動機としては悪くはないんだけど、やっぱり真っ向からそれを否定する側がいてこそ成立するものだよな、と再認識できたし、新作がアンチテーゼとして機能してるようで嬉しくなった。
そういう意味でもアメコミヒーローものとして王道なんだろうな。

あとサントラがめちゃくちゃいい。ニルヴァーナの使い方が神神の神。
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