マレーボネ

アリスとテレスのまぼろし工場のマレーボネのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

『アリスとテレスのまぼろし工場』おもしろかった!

『さよならの朝に〜』でもそうだったけど、あらゆる形の愛とか恋を、ポジティブな面もネガティブな面も両方目一杯詰め込みまくってて、胸やけしながらもザクザク刺さっていって気持ちがいっぱいになっていく、そんな作品だと思う。

特に今作では舞台であるまぼろしの世界にいろんな意味を持たせているのが強く印象に残った。
物語の枠組みが見えた時点では、「起きている人が見ている夢」 「不変を強いられる世界」として描写される。

まぼろしの中の人でさえ変化し、未来を掴もうとすることができる、いわんや現実に生きる人をや、と言わんばかりにもがく少年少女たち。

それをぼんやり眺めて、抑圧された世界からの脱出を目論む……みたいやのを期待しながら見ていると、あっという間に全く違う方向にストーリーが進む。

まぼろしの世界は、一番良い瞬間を保存してくれていて、目まぐるしく変わっていく辛い現実より美しい。
だからこそ起きている人が見る希望の世界でもある、と。

まぼろしの世界を抜けて未来を切り開きたいという希望と、悲しみにくれる辛い日々を過ごす郷愁。
まぼろし世界と現実世界、両方の主人公たちを通して2面性を浮き彫りにしていく。
この辺は正直めちゃくちゃネチっこい笑
ネチっこいからこそ説得力がある。

(ありていに言えば「見方で世界は変わる」なんだけど、これを作中での敵役で一番ヤベーやつ(ヒロインの父親)に体現させてるのがすごい)

そして、こういう世界観を一つの成長物語としてまとめるのがいつみ。

未来を切り開く希望と、うちに秘める郷愁、そのどちらも生きていく上で不可欠なものなのだ、と成長して工場を訪れたいつみを見てそんなことを思った。

主人公たちの恋愛といつみの成長、世界と人々の変化など複数のラインが同時に進行する上、そのどれもにネガティブもポジティブも詰め込みまくってるので、人を選ぶ作品(むしろ作風)だけど、刺さる人には忘れられないものになる、そんな作品なんだろうな。



ところで、前作のエルフの男といい、今作のトンネルで告って消された友だちといい、こんなにも登場人物たちを幸せにしたいと思ってるストーリーの中で、ガチで無残なヤツ一人いるの何なんだろう……。


(おまけ)

細田守監督「おおかみこどもの雨と雪!」
→岡田麿里監督「なるほどな。お手本見せてやるわ」
→『さよならの朝に約束の花を』

山崎貴監督「ドラクエユアストーリー!」
→岡田麿里監督「なるほどな。お手本見せてやるわ」
→『アリスとテレスのまぼろし工場』

自分の中ではこんな感じ。
マレーボネ

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