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オリーブの山のandorinhaのレビュー・感想・評価

オリーブの山(2015年製作の映画)
4.5
どの国でも専業主婦の世界というのは狭いのだなと、この映画を観ながら考えた。
夫には職場が、子どもには学校が、それぞれ家とは別に生きる世界がある。
しかし専業主婦はどうだろう。家が職場であり、生活の場だ。夫が仕事に邁進し、子どもが反抗期を迎えれば、家の外に生きる世界がない主婦はとたんに孤立してしまう。

この映画の主人公ツヴィアがまさにそうだ。ツヴィアは神学の教師である夫ともっと密に日々を過ごしたいと願っている。ユダヤ教も恐らく愛を重んじる宗教だと思うのだが、神学を教える立場の男の妻が、夫の愛に飢えているのはなんとも皮肉だ。
彼女は時折、家の外を取り囲む墓地で時を過ごす。日本の墓地と違いどこか明るい印象で、周りの景観にも馴染み、とても美しい。日本と死生観が少し異なることが影響しているのか、欧米では墓地はデートスポットの定番だと聞いたことがある。実際、映画の中でも夜な夜な男と女が集い、交わる。
この墓地でツヴィアは、普段は違う世界に生きる人たちと接し、言葉を交わしていく中で、彼女の心にある変化が芽生える…。

主婦ツヴィアの心の変化が、繊細に且つ丁寧に描かれたこの作品からはこなれた印象を受けたが、これが監督デビュー作。近年、イスラエル映画界の存在感には目を見張るものがある。監督の次回作が待ち遠しい!
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