スリランカ内戦と言えば「ディーパンの闘い」が記憶に新しいが、これはいわば脱出出来なかったディーパンの、取り残された家族の物語だ。
密告により、政府に夫を殺された妻と八人の子供たち。
乳飲み子を抱えた妻は、何とか家族を支えようとするが、状況は悪化するばかり。
セーフティーネットなどという概念は無く、そもそも母子家庭が生きて行ける様に社会が出来てない。
過酷な労働、くり返される男たちの理不尽な暴力、そして村八分まで。
沸々と煮えたぎる静かな怒りが全編に渡って流れているから、あのラストしかないのだろう。
ただ、妻がなぜもとの土地で生きて行こうとするのかが今ひとつ分からない。
最初から一家でコロンボに出たら良いのにと思ってしまった。
夫の遺志を継ぐ以外に、何かスリランカ文化ならではの理由があるのかも知れないが、ならば少しでも言及が欲しかった。