Yoshmon

汚れたミルク/あるセールスマンの告発のYoshmonのレビュー・感想・評価

4.2
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「企業の社会的責任」(CSR)について、改めて考えさせる作品。

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作品の構成が個人的に新しく斬新。この映画の制作に携わった人たちの挑戦とその苦労が伝播してくる作品。

製作者側の努力をあからさまに作中に目に見える形にすることに反感を感じる人もいるかもしれないが、この作品にとってはその手法は活きている。
その手法によって、作品で取り扱っているテーマが「事実」であることを知らしめることで、そのストーリーを如実に語らせている。

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個人的にチョコレートとかコーヒーとか大人しめで平和なイメージがあったネスレの、食品・飲料業界世界最大手の多国籍企業としての負の側面を見た。

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ネスレは製造元として、管理された品質管理、製造工程を以って粉ミルクを製造・販売。

規定された「標準的な」用途・方法で消費者がその製品を扱えば何も問題は起こらない。

原因は貧困によりもたらされる「不衛生な水の利用」と「節約」による少ない用量を使っての希薄されたミルクの授乳。

一度健康を害した赤ちゃんは下痢を繰り返し脱水状態へ。
母乳とは違い、赤ちゃんに免疫力を与えることのない粉ミルク。

故に日々多くの赤ちゃんが途上国で命を失くしてゆく。

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社会における企業の責任・役割を考えた時、ネスレはこの状況の中何をすべきだっただろうか。

起きた結果から言えば、多国籍企業であるネスレは自社の利益のために販売を中止することなく、不衛生な水しか手に入らない社会へ安全を供給するためのアクション(社会インフラの整備や教育等)すら一切しなかった。

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「”企業”は誰のものか?」

大学に入って、1番最初の講義で教授から投げかけられた質問。

その問いに対する答えは、会社法上では「株主」である。
でもそれだけが答えじゃない。

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因みに作中ではネスレという社名は冒頭にほんの一瞬だけ、その後は全く出てきません。

その理由も既述の通り、多国籍企業の姿勢と彼らの持つパワーを僕たちに知らしめるための製作者側の意図に感じる。

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学生時代は経営学専攻だったから、この手の議論はエンドレス^^
Yoshmon

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